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動物を使ったアート作品 

今回、僕はこのプロジェクトで本物のひとこぶラクダをギャラリーで展示して、それを見ながら煙草のCAMELを吸おうというわけですが、ギャラリーで動物を展示したのはもちろん、僕が最初ではありません。美術史からいくつか代表例を紹介してみます。

kounellis

生きた動物を展示したもので(おそらく最初のもの)有名なのは、1960年代後半、イタリアのヤニス・クーネリスが、本物の生きた馬をギャラリーに展示した作品(Horses, 1969)でしょう。この作品は当時のアート運動、「アート・ポヴェーラ」(Art povera それまでの金持ちによる金持ちのための絵画中心のアートに対抗して、貧乏人?による今までにないアートの形を提唱した運動)の流れで捉えられています。
当時の主流だった、静止した、いわば死んだものとしての絵画(実際、その中に馬が登場することは多い)の代わりに、生きた馬をそのまま展示したわけです。そりゃ、当時にすれば「?!?!?!」と、相当な驚きだったのでしょう。ちなみに写真で見る限りで、馬は8頭もいます。ヤニスは友人に牧場主でもいたのでしょうか…。

最近では、同じイタリアのアーティスト、マウリッツォ・カテランが1996年に発表した「The Ballad of Trotsky」(1996)が有名です。またしても馬ですが(ひょっとするとヤニスの現代版を意識もしていたのかもしれません)、こっちは死んでいます(剥製)。そして天井から吊り下げられています。

trotsky

ちなみに、この作品はベネチアビエンナーレなど各地で展示され、2004年のサザビーズのオークションで、2億円以上!の値をつけたと言われています。僕は実際に見たことはありませんが、そのオークションカタログには以下のようにあります。

「永久に宙に吊り下げられた馬、そこには何か恐ろしさと悲しさがあると同時に、エレガントでため息をもらすようなものがある。また、同時に(彼の他の作品と同様)完全に途方もなくバカげている。カテランはこの運搬用動物である馬のもつ強さと力を、人間の悲喜劇的状況を反映する無力さのイメージへと変換する。」

それにしても「途方もなくバカげている」ものに、なぜ2億円以上もの値段がつくのか…そこがアートという創造による価値の飛躍、錬金術の面白いところです。もちろん高値の原因は、M・カテランが今、トリックスター、道化、泥棒(実際、過去に他人の個展に夜侵入して作品を盗み、それを自分の作品として展示したこともある)と称される、現代アート界有数の売れっ子(アーティストランキングより)だということはありますが、彼の作品でも値がつかないものもあるので、それだけじゃない。ポイントはこの作品につけられたタイトル、「トロツキーのバラード」でしょう。そこから想像されるのは、ロシア革命前後に永続革命や世界革命を提唱し、最後は亡命先のメキシコでトンカチで頭を割られて暗殺された革命家、トロツキーです。カタログでは、以下のように勝手に深読みされています。

「タイトルはこうも伝える:普遍的ユートピアの無力と、人間のダークサイドによる、ロマンチックな理想主義の強奪の記念碑だということ。この作品は、トロツキーの死、さらには彼の理想の可能性の失敗と、私たちの人生の不完全性についての、悲しみなのです。」

このように、馬を剥製にして天井から吊り下げてタイトルをつけることによって、カテランはただの馬を、背後に複数の物語のレイヤーをもつ「記念碑」に仕立て上げたわけです(本人の意図がそこにあったかわかりませんが、結果としてはそう評価されている)。

イメージ X 文脈 X 知名度=2億円以上の価値を生んだ
(ちなみに、馬の剥製をつくっているのはもちろん専門業者なので、彼は実質この作品のアイデアを思いついて発注をしただけ)。

アートというと、手作業で何かをつくるのをイメージしがちですが、僕はイメージと(そこに貼りつく)意味のレイヤーのかけ算による従来価値の変換にこそ、現代アートの本質があると考えています。

insta

知名度レベルはまったく違えど、今回の僕のプロジェクトは単純に「ギャラリーに動物を展示する」という点ではこうした先達たちの系譜に連なるでしょう。でもそれでは「馬かラクダか」という違いしかありません(幸いかつてラクダをギャラリーに展示した例はまだ聞いていませんが。笑)。

このプロジェクトは、単なるラクダをギャラリー空間に置き、その前(路上禁煙法の施行された地域のギャラリー)で同名の煙草を吸うという体験を通して、消費社会におけるイメージとリアルの関係、広告とアートの関係、そして昨今の禁煙ブームにおける個人の自由についてなど、いくつかのレイヤーがかけ算されるところが面白さのポイントだと思っています。
ほんとうは、こういうことを自分で書くのは面映いけど、2つの先例について書き始めたら、自分のを書かずには締まらなくなってしまいました…。

ふうーっ、かなり長くなりました。
読んでくれた方、ありがとうございます。
そろそろ一服、いかがですか?





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